押さえておきたい「G7広島サミット」
急遽実現したウクライナのゼレンスキー大統領の対面参加で大きく注目された「G7広島サミット」。2023年5月19日から21日の3日間、広島で開催されました。開催の事実までは知っているけれども、何が話し合われ・どんな成果があったのか、もうちょっと理解したいという方のために概要をまとめました。今回は、やまとらしく「エネルギー」関連にしぼって。一緒におさらいしましょう!
基本のキ。G7広島サミットの概要
G7サミットとは、イタリア・カナダ・フランス・アメリカ・イギリス・ドイツ、そして日本の7カ国にEUが加わった毎年開催される国際会議です。各国の首脳や代表らで、世界経済や地域情勢、さまざまな地球規模の課題について意見を交わす場です。また、上記の参加国以外にも、招待国としてオーストラリア・ブラジル・コモロ(アフリカ連合(AU)議長国)・クック諸島(太平洋諸島フォーラム(PIF)議長国)・インド(G20議長国)・インドネシア(ASEAN議長国)・韓国・ベトナムが、ゲスト国としてウクライナが出席しました。2023年の今回はここ日本が議長国となり、広島で開催されたことで、国内から一層の注目があつまりました。
横一列にならんだ集合写真に9人いたのは、EUから2人参加していたから!
G7広島サミットでの重要課題とは?
G7広島サミットの公式サイトでは、重要課題として7つ上げられていました。
❶ウクライナ問題やインド太平洋に関わる「地域情勢」
❷広島と縁も深い「核軍縮・不拡散」
❸G7サミット議題として初めて取り上げられた「経済的強靱性・経済安全保障」
❹ウクライナ侵攻でますますその重要性が再認識される「気候・エネルギー」
❺食料危機問題への対処と克服への道筋を問う「食料」
❻新型コロナの教訓を生かしたい「保健」
❼危機下の脆弱な人々への支援を念頭に議論を行う「開発」
現在もつづくウクライナ侵攻のなか、ロシアのプーチン大統領が核兵器を使用するのではと言われている現況下。戦争終結のきっかけになった日本への原爆投下、その被爆地である広島が開催地とあって、「地域情勢」「核軍縮・不拡散」が重要課題のなかでもとりわけ大きく焦点になった印象です。
エネルギー観点からみるG7広島サミットの成果は?
G7広島サミットの成果は、「G7広島首脳コミュニケ」で見ることができます。コミュニケは共同声明のこと。成果文書「G7広島首脳コミュニケ(骨子)」では8ページにわたっていますが、今回はエネルギーに関するところだけ、抜粋し引用します。
エネルギー
G7広島首脳コミュニケ(骨子)
●エネルギー安全保障、気候危機及び地政学的リスクに一体的に取り組むことにコミットする。
●各国のエネルギー事情、産業・社会構造及び地理的条件に応じた多様な道筋を認識しつつ、これらの道筋が遅くとも2050年までにネット・ゼロという共通目標につながることを強調する。
●再生可能エネルギーの世界的な導入拡大及びコスト引下げに貢献する。
● 排出削減対策が講じられていない新規の石炭火力発電所の建設終了に向けて取り組んでいく。排出削減対策が講じられていない新規の石炭火力発電所のプロジェクトを世界全体で可及的速やかに終了することを他国に呼びかけ、協働する。
●遅くとも2050年までにエネルギー・システムにおけるネット・ゼロを達成するために、排出削減対策が講じられていない化石燃料のフェーズアウトを加速させるという我々のコミットメントを強調し、他国に対して我々と共に同様の行動を取ることを呼びかける。
●ガス部門への投資が、現下の危機及びこの危機により引き起こされ得る将来的なガス市場の不足に対応するために、適切であり得ることを認識する。
●福島第一原発の廃炉作業の着実な進展と日本の透明性のある取組を歓迎する。ALPS処理水の放出に関する国際原子力機関(IAEA)の独立したレビューを支持する。
クリーン・エネルギー経済
G7広島首脳コミュニケ(骨子)
●安全で強靱な、廉価で持続可能なクリーン・エネルギーのサプライチェーンを追求することを決意する。「クリーン・エネルギー経済行動計画」に示された具体的な行動を通じて、引き続き国際的なパートナーと協力して取り組んでいく。
文中にでてくる「ネット・ゼロ」は、「カーボンニュートラル」のほぼ同義と思って良さそうです。
この成果をどのように受け取るかはそれぞれです。各分野の専門家、置かれている立場や、各々がもつ理想によって、単純に良い・悪いだけでなく、さまざまな意見がでています。個人的には、これまでも繰り返されてきたように「2050年脱炭素に向けてG7が先頭に立って世界一丸となってより一層邁進しよう」との姿勢が強くみられていると感じました。また脱炭素に向かう一方で、ウクライナ侵攻によりエネルギー需給バランスがくずれ、エネルギー価格の高騰が世界共通の課題に。脱炭素とエネルギーの確保の両立が必要です。安全で、安心の価格で、持続可能なクリーンエネルギーへの転換が強く求められています。国として、企業として、個人として、エネルギーの在り方と使い方を見直していきたいと思います。
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