最新!エネルギー白書2025 日本のエネルギー最前線
日本のエネルギーの「今」と「未来」を映し出す重要資料「エネルギー白書2025」が2025年6月に発表されました。「エネルギー白書」は経済産業省の資源エネルギー庁が毎年発行しています。日本のエネルギー政策の羅針盤と言っていいでしょう。最新の白書の柱は3つ。それが「福島復興の進捗」、「日本のGX戦略」、「カーボンニュートラル実現に向けての世界の動向」です。日本のエネルギー最前線の現状を一緒に読み解いていきましょう。

目次
気になる福島復興の進捗は?
日本の大きなエネルギー源だった原発事故から14年。今も福島では復興作業が続いています。福島第一原発では、世界でも前例のない技術的難易度の高い「燃料デブリの取り出し」が段階的に進行しています。話題となる「処理水放出」は、国際的な安全基準に基づき、IAEAなどの専門機関による監視のもとで実施されています。また、飯舘村や葛尾村では一部地域で避難指示が解除されるなど、地域再生に向けた取り組みも着実に進んでいると報告されています。

14年の歩みは決して短いものではありませんが、復興がいかに長期的な課題であるかを改めて実感します。

GX・2050年カーボンニュートラル実現に向けた日本の取組は?
日本のエネルギー自給率は2023年度時点で15.3%と、G7各国の中で最も低い水準にとどまっています。発電は約7割を化石エネルギーに依存しており、ロシアによるウクライナ侵略や中東情勢の緊迫化など、国際情勢の変化が日本のエネルギー事情に大きな影響を与えています。エネルギーの安全保障や脱炭素化が大きな課題です。
このようなエネルギー事情を背景に、日本は2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、「GX(グリーントランスフォーメーション)」を推進しています。
GXは、脱炭素社会への移行と経済成長を両立させる取り組みのこと。この鍵となるのが、企業がもつ次世代エネルギーの革新技術なのです。具体的には、ペロブスカイト太陽電池、浮体式洋上風力、光電融合、安全性やエネルギー効率を向上させた次世代革新炉、水素、次世代型地熱発電などの革新技術のイノベーションとビジネス化が不可欠とされています。

「ペロブスカイト太陽電池」はエネクリップでも過去取り上げていますので、こちらもぜひご覧ください。

カーボンニュートラル実現に向けた世界の動向は?
次は世界の動向を見ていきましょう。白書では主要10か国・地域として、米国、EU、英国、韓国、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、中国の動向を取り上げていました。
全体としては2050年カーボンニュートラル実現に向けた野心的な目標を堅持しつつも、経済性や安定供給とのバランスをとる現実路線への転換も見られます。各国の取り組みは以下にまとめました。
米国
トランプ政権はクリーンエネルギー政策を転換し、パリ協定からの脱退を表明。一方で、国産エネルギー資源開発と原子力を推進する方針。
EU
2030年に1990年比で55%削減目標、2040年までに90%削減を提案中。排出量取引制度を強化し、再エネ、SMR、グリーン水素、CCUSの導入を促進しています。
英国
2030年に1990年比68%削減、2035年に81%削減を目指し、再エネ導入と原子力発電所の新設を推進しています。
韓国
2030年に2018年比40%削減を目指し、洋上風力と原子力の拡大を推進しています。
カナダ
2035年に2005年比45~50%削減を目指します。水力発電の割合が高く、再エネ、水素、CCUSを推進しています。
フランス
2030年に1990年比50%削減を目指し、省エネ、再エネ拡大、既存原子力の活用を推進しています。
ドイツ
2045年カーボンニュートラル、2040年までに1990年比88%削減を目標。再エネを重視し、原子力発電は2023年4月にフェーズアウトを完了しました。
イタリア
2030年に1990年比55%削減を目指します。再エネを拡大し、原子力発電の再開に向けた整備を進めています。
中国
GHG排出は増加傾向。2060年カーボンニュートラル、2030年までにCO2排出量ピークアウトを目指します。石炭火力も利用拡大しつつ、再エネ・原子力の設備容量も拡大しています。

各国とも理想と現実のバランスに苦心しているのがよくわかりますね。
以上、エネルギー白書2025から早足でお届けしましたが、いかがでしょうか?
詳細については、以下でご確認ください。
エネルギー白書2025について(令和7年6月 経済産業省 資源エネルギー庁)
福島復興、日本のGX戦略、そして世界の脱炭素への動きなど、エネルギーをめぐる潮流が立体的に見えてきます。
私たちの暮らしにも直結するテーマとして、次の一歩を見逃さないために、これからも目を離さずにいたいですね。