ワカメやコンブが地球を救う!? 脱炭素のカギ「ブルーカーボン」とは?
地球温暖化防止、脱炭素社会、カーボンニュートラル。これらを実現するための新たな手段として、今関心を集めているのが「ブルーカーボン」の活用です。ここでは「ブルーカーボン」って何?という基礎知識から、その取り組み方法までをお伝えします。
ブルーカーボンとは?
「ブルーカーボン」について、環境省の特設サイトでは以下のように紹介されています。
沿岸・海洋生態系が光合成によりCO2を取り込み、その後海底や深海に蓄積される炭素のことを、ブルーカーボンと呼びます。
この「ブルーカーボン」を生成する沿岸・海洋生態系のことを「ブルーカーボン生態系」と言い、大きく4つあげることができます。
1.岩礁に生息する植物でワカメやコンブなどの「海藻(うみも)」
2.浅いところに生育する植物でアマモやスガモなどの「海草(うみくさ)」
3.干潮時に干上がる「干潟」やヨシなどが茂る湿地帯「塩性湿地」
4.熱帯などで河川水と海水が混じる汽⽔域に⽣息する「マングローブ林」
これら「ブルーカーボン生態系」を守り、広げることは地球温暖化防止の一手となります。
グリーンカーボンとの違いは?
「ブルーカーボン」とよく引き合いに出されるのが「グリーンカーボン」です。どちらも排出するCO2を減らし実質ゼロにする「カーボンニュートラル」実現のための重要なキーですが、大きく違う点が2つ。それが炭素をためる“場所”と“期間”です。
【違い1】炭素の貯留場所
炭素の貯留場所とは大気から吸収されたCO2が保存される場所のことです。「ブルーカーボン」が土壌や海水、深海など海中に炭素を蓄積するのに対し、「グリーンカーボン」は、陸上の樹木が光合成を行うことでCO2を吸収し、樹木内に炭素を蓄積します。
地球温暖化防止対策に森林保全活動をよく見聞きするので「グリーンカーボン」の方がイメージしやすいですね
【違い2】炭素の貯留期間
単に炭素を貯留する場所が違うだけではありません。注目すべきは炭素が貯留される期間です。実は「グリーンカーボン」は樹木が炭素を吸収・蓄積しているので、貯留期間は樹木の寿命と同じくらいの数十年から百年程度。一方「ブルーカーボン」は海底の堆積物中に貯留炭素が貯留され、貯留期間ははるかに長く数百年から千年と言われています。この違いは大きいですね。これが「ブルーカーボン」が吸収源として大きく注目を集めている理由です。
「ブルーカーボン」と「グリーンカーボン」の比較表をつくってみました。
「Jブルークレジット」も「J-クレジット」もカーボン・クレジットになります。カーボン・クレジットについては以下の記事で詳しく紹介していますよ。「Jブルークレジット」についてはのちほど。
ブルーカーボンに取り組むには?
地球にも環境にも貢献できる「ブルーカーボン」に、どのように取り組めばいいのでしょうか? 3つの方法をご紹介します。
1.ブルーカーボンを増やす
まず第一に考えられるのが、「ブルーカーボン」を直接増やす取り組み。とくにブルーカーボン生態系の大部分を占める藻場が、減少を続けていることは日本でも大きな問題となっています。、「ブルーカーボン」を増やすためには、ブルーカーボン生態系を守り・育てる必要があります。新たな藻場(海草・海藻)を生む母藻の移植や、藻食するウニの除去などが有用ですが個人ではむずかしい面もありますね。まずは海の汚染を阻むための清掃活動など取り組みやすいところから始めてみるのはいかがでしょうか。
2.ブルーカーボンを増やす取り組みを応援する
1のような直接的な活動だけでなく、すでに、「ブルーカーボン」を増やす取り組みを行っている団体などを応援することも、ひとつの方法です。例えば環境省では、人が関わってより良い海を作り、豊かな恵みを得る「里海づくり」の考え方を取り入れた沿岸海域の水環境の保全等に取り組んでいて、令和4年度からは「令和の里海づくり」モデル事業を実施しています。2024年4月に発表された実施団体は全国津々浦々19団体ありました。ご縁の深い地域の実施団体に支援活動をしてみるのもいいかもしれません。
やまとの本拠地・鹿児島には「山川町漁業協同組合」さまの名前がありました!
3.Jブルークレジットを購入する
最後に企業におすすめしたいのが「Jブルークレジット」の購入です。Jブルークレジットとは、ジャパンブルーエコノミー技術研究組合 が認証・発行・管理する、令和2年度から取引が開始されたばかりの新しいカーボン・クレジットです。、「ブルーカーボン」を、クレジット(排出権)化し、売買・取引可能にする仕組みです。現在のところ、Jブルークレジットは個人での購入はできず、国内の団体・法人のみが購入対象となっています。ほかのカーボン・クレジットど同様に、自社で削減しきれなかった温室効果ガスをオフセットすることができるので、脱炭素化に取り組む企業にとって実用的な手段のひとつになるはずです。
Jブルークレジット制度については、改めて仕組みなど解説したいと思います!
四方を海に囲まれた島国である日本は、「ブルーカーボン」の宝庫です。世界各国でも「ブルーカーボン」を活用する動きは活発化していますが、日本は世界で初めて海草藻場・海藻藻場の吸収量を合わせて国連に報告するなど、先進的な動きをみせています。これからブルーカーボンの重要性はさらに増すでしょう。ぜひこの機会に取り組みを検討してみてください。
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